本の紹介

岡村幸宣『未来へ――原爆の図丸木美術館学芸員作業日誌2011-2016』新宿書房、2020年

一読してうらやましいの一言。副題にあるとおり、この5年間における著者の展覧会作業記録や関わった芸術家や関係者との交友録が描かれており、著者が勤務する丸木美術館の性格上、芸術の社会性をくりかえし問う場面が多く、考えさせられる。中でも重要なのは、「原爆の図」のアメリカでの展覧会が、1970年依頼45年ぶりに2015年に開催されたことである。1970年当時は原爆使用に肯定的なアメリカ世論の影響もあってか、「原爆の図」は酷評されたが、今回は若い世代を中心に原爆使用に否定的な意見も広まっており、「原爆の図」も前回より高く評価された。著者はそこに将来に向けての希望を読み取っている。

ちなみに著者は、2015年に『《原爆の図》全国巡回――占領下、100万人が観た』を同じく新宿書房から2015年に公刊しており、多忙な中で執筆をこなした著者の精力的な作業は賞賛に値する。内容は、1950年代を中心に「原爆の図」が各地を巡回し人々を動員、様々な反響を巻き起こしていく様を詳細に記録したもので、一読をお勧めする。書評については、新宿書房のホームページを参照されたい。

www.shinjuku-shobo.co.jpなお、以前にも書いたことだが、丸木美術館は現在窮状打破のための支援の呼びかけを行なっており、志のある方々はご協力をお願いしたい。

当美術館へのご支援をお願いします | 原爆の図 丸木美術館