本の紹介

砂野唯『酒を食べる——―エチオピア・デラシャを事例として』昭和堂、2019年

 

酒を主食としているほぼ唯一の民族が存在するという好奇心から、またこの本を高く評価している人が結構いるらしく、酒飲みを自負する人間として面白半分に読んでみた。生態人類学という私にはかなり縁遠い分野の研究であるせいもあり、気楽に読めた。最初は一日中酒を飲んで生活しているとは何とうらやましい人たちかと思っていたが、著者が説明するようにどうもそうではないらしい。何より酒もさることながら肉、魚、野菜などつまみ類をともに食べる食生活に馴染んでいる私にとっては、ごく限られた品数の酒(パルショータと呼ばれ主食でもある)で生活していくことはかなり大変であろうと想像できる。著者が栄養失調になったというのもむべなるかな。ご苦労を多としたい。

何より私が興味深く感じたのが、ポロタと呼ばれる地下貯蔵穴で、フラスコ型に掘り下げられた巨大な地下穴にパルショータの原料となるモロコシを長期保存できるという。これは単なる貯蔵庫ではなく、土地利用や村落内での人間関係(食料の貸し借りなど)と深く結びつき、著者は「富の固定を許し、それにともなう格差が、デラシャ社会のなかで抗争が繰り返される原因となっているのは皮肉なことである」(181頁)と述べている。生態人類学の食物や土壌の成分分析などは読み飛ばしたものの、世界の食文化・酒文化に関心を持つ読者にとってはお勧めであろう。