本の紹介 柴田優呼『プロデュースされた<被爆者>たち――表象空間におけるヒロシマ・ナガサキ』岩波書店、2021年 柴田氏の前著『”ヒロシマ・ナガサキ神話”を解体する』(作品社、2015年)を楽しみながら読んだ読者としては、今回も期待を持って同書を手に取…

本の紹介 日高勝之『「反原発」のメディア・言説史――3.11以後の変容』岩波書店、2021年 著者は『昭和ノスタルジアとは何か』(世界思想社、2014年)で優れた言説分析を示したメディア論の専門家だけあって、期待をもって読んだ。主要な著作、論者、映画が手…

本の紹介 荻野晃也『科学者の社会的責任を問う』緑風出版、2020 著者は京都大学の研究者として、よく知られている「熊取六人組」の小出裕章氏らとともに原発立地地域の住民の反原発運動を支援してきた。本書の特色は、(1)これまで聖人視されてきた湯川秀…

本の紹介 広島市立大学国際学部多文化共生プログラム編『周辺に目を凝らす――マイノリティの言語・記憶・生の実践』彩流社、2021年 興味深そうな論考が並び、思わず手に取った。まだ全部に目を通したわけではなく、私が関心を抱いた広島の被爆者に関連する論…

本の紹介 砂野唯『酒を食べる——―エチオピア・デラシャを事例として』昭和堂、2019年 酒を主食としているほぼ唯一の民族が存在するという好奇心から、またこの本を高く評価している人が結構いるらしく、酒飲みを自負する人間として面白半分に読んでみた。生態…

本の紹介 岡村幸宣『未来へ――原爆の図丸木美術館学芸員作業日誌2011-2016』新宿書房、2020年 一読してうらやましいの一言。副題にあるとおり、この5年間における著者の展覧会作業記録や関わった芸術家や関係者との交友録が描かれており、著者が勤務する丸木…

本の紹介 才津祐美子『世界遺産「白川郷」を生きる—―リビングヘリテージと文化の資源化』新曜社、2020年 必要性に迫られて読んだ本。半分は期待を満たされ、残りはやや物足りない感じがしたというのが正直なところ。著者は博士後期課程に入ってから白川郷を…

本の紹介 パール・バック(丸田浩監修・小林政子訳)『神の火を制御せよ――原爆をつくった人びと』径書房 本書を知ったのは、熊芳『林京子の文学――戦争と核の時代を生きる』の参考文献としてあげられていたからである(この本の紹介については他日を期したい…

本の紹介 鈴木道彦『余白の声 文学・サルトル・在日――鈴木道彦講演集」閏月社、2018年 すでにいくつか書評も出ているようだが(朝日新聞、週刊読書人、他にもあるかもしれない)、ここでは私独自の視点から評してみたい。私は在日コリアンと日本人の関係に関…

本の紹介 小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている――アングラ経済の人類学』春秋社、2019年 久しぶりに人類学者の本を読んだ。私は経済人類学にはなじみがないので、本書の真の評価はできないのだが、それでも著者が筆達者であることはわかる。…

本の紹介 山根実紀『オモニが歌う竹田の子守唄――在日朝鮮人女性の学びとポスト植民地問題』インパクト出版会、2017年 読後の感想は、あまりに倫理的すぎる、これに尽きる。本書は若くして逝去した著者の遺稿集で、多面的な活動を展開した著者のすべてを網羅…

本の紹介 岡真理『ガザに地下鉄が走る日』みすず書房、2018年 著者はアラブ文学とパレスチナ問題の専門家で、私はまったくの門外漢ながら、著者の『記憶/物語』や『彼女の「正しい」名前とは何か』を読み、著者の繊細で文学者らしい感性に感心した記憶があ…

本の紹介 目取真俊『ヤンバルの深き森と海より』影書房、2020年 一言で言うなら、深い怒りに全編覆われた書物、ということになろうか。私にとって目取真氏とは、鋭い刃をヤマトゥンチューに突き付ける論客であり、その印象は本書を読んだ後でもまったく変わ…

本の紹介 バリー・M・コーエンほか編著(安克昌訳者代表、中井久夫序文)『多重人格者の心の内側の世界ーー154人の当事者の手記』作品社、2003年(Barry M. Cohen etal(eds.), 1991, Multiple Personality Disorder from the Inside Out) 『心の傷を癒すとい…

本の紹介 杉田俊介・櫻井信栄編・河村湊編集協力『対抗言論』1、法政大学出版局、2019 2週間ほどかけて少しずつ読んだ本。これも参考になる論文が多く、とてもすべてを紹介している時間がない。以下、目次といくつか目に留まった文章について言及する。 〈座…

本の紹介 長谷川紀子『ノルウェーのサーメ学校に見る先住民族の文化伝承――ハットフェルダル・サーメ学校のユニークな教育』新評論、2019年 この本もざっと目を通しただけである。それでも、著者が長期間に渡ってフィールドワークを行ない、丹念に準備した書…

本の紹介 安克昌『増補改訂版 心の傷を癒すということ』作品社、2011年 河村直哉『精神科医・安克昌さんが遺したもの――大震災、心の傷、家族との最後の日々」作品社、2020年 今年になってNHKで安克昌氏を主人公とした安氏の著書と同名のテレビドラマ「心の傷…

本の紹介 中村隆之『野蛮の言説――差別と排除の精神史』春陽堂、2020年 大雑把に読んだだけだが、西洋大航海時代から始まって、現代の相模原障害者殺傷事件へと至る過程を、人種主義や優生思想を経由しながら「野蛮の言説」の系譜で読み解くという、思想史の…

社会学者と気候変動・地球温暖化問題

ジョン・アーリ(吉原直樹ほか訳)『<未来像>の未来――未来の予測と創造の社会学』作品社、2019年、をざっと読んだ。未来像の変遷は正直あまりよく理解できなかったが、一番面白かったのは3D印刷の話。3Dプリンターが普及しいろいろなものがオーダーメイド…

本の紹介 吉田隆之『芸術祭と地域づくり――“祭り”の受容から自発・協働による固有資源化へ』水曜社、2019 各地の事例を主にソーシャル・キャピタルの形成という視点から分析していて、最近はやりの芸術祭と地域づくりに関心のある読者ならもっと興味深く読め…

本の紹介 山村淳平・陳天璽『移民がやってきた――アジアの少数民族、日本での物語』現代人文社、2019 無国籍ネットワークを主宰する陳天璽氏と日本で移民や難民の医療に携わり、彼らの声を外国人労働者弁護団のウェブサイトで紹介する医師・山村淳平氏が開い…

中村哲・澤地久恵(聞き手)『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る――アフガンとの約束』岩波書店、2010 先週から起床してすぐ少しずつ読んだ本。心が落ち着く。言葉が浮いていない。大言壮語ではなく、苦難を地に足の着いたやり方で乗り越えてきた人の話。…

本の紹介 堀有伸『荒野の精神医学――福島原発事故と日本的ナルシシズム』遠見書房、2019 著者は1972年生まれの精神科医。東日本大震災までは東京で勤務していたが、「東京電力福島第一原子力発電事故に衝撃を受け、2012年から福島県南相馬市で暮らす」と奥付…

映画の紹介 岡崎まゆみ監督「40年 紅どうだん咲く村で」(102分) 主人公は美浜町新庄在住の松下照幸とその妻ひとみ。映画のイントロダクションは下記URLを参照。 https://benidoudan.themedia.jp/ 2011年3月11日以前、福井県の若狭湾周辺地域には14基(当時…

本の紹介 北田淳子『原子力発電世論の力学――リスク・価値観・効率性のせめぎ合い』大阪大学出版会、2019 奥付によると、著者は1993年以来、原子力安全システム研究所において、原子力発電に関わる社会意識の研究に従事。計量社会学的研究で、第11章「まとめ…